「課長。とりあえず、明日までお休みさせて下さいますか?携帯を変えてきます」

「勿論構わない。有給休暇は残っているんだろう?いや…今回は有休じゃなく労災が適用されるかもしれないな」

「いえっ!労災なんてとんでもありません!」

「だが業務中に発生した事だ。労災が適用されて当然だろう」

「でも…労災が発生すると会社の保険料負担が増えます…」

「そんな事は気にしなくていい。君は被害者なんだ」

「そうですけど…でも…」

「なんだ?」

その…あなたの…
評価が下がるかもしれないじゃないの…。

「労災を出すと、所属している職員の上司の査定にも関わってきます…」

「…俺の心配をしてくれてるのか?」

「当然です。私のせいで課長の評価が下がるかもしれないのですよ?ご自分の失態でもないのに…」

「そういう理由での心配なら必要ない。俺自身の失態であろうとなかろうと、部下に辛い思いをさせたのは事実だ。日頃から気を配っていれば避けられた事態だ。それを怠ったのは間違いない。それが査定に響くならば、評価は甘んじて受ける」

なんて…潔くて…男らしいの…。

素敵… なんて素敵なんだろう…。

私は今まで、一体この人の何を見て来たんだろう…。

最初に行った店で言われた事が気に障ったのは事実だけれど…

その後も課長の本質をまっさらな気持ちで見ようともせず、常に穿った見方をしていた気がする。