兄は私の気持ちには気付かずに、課長に家族として頭を下げた。

「お兄さん!やめて下さい!上司として当然の事です!寧ろ、今まで気付かなかった事の方が…申し訳ないです…。上杉くんの悩みに気付いてやれず、上司としては失格です…」

今度は課長が兄に頭を下げた。

「やめて下さい!課長!私がそんな事、おくびにも出さなかったんです!気付かなくても仕方ありません!」

そうなのよ!

一番はっきりしなかったのは私自身なの。

お兄さんに急かされていたのにも関わらず、相談して来なかったの。

こんな…

こんな事態になるまで…

放置していたの!

でも課長は一切の責任を自らが被るような言葉を発する。

「だとしてもだ。部下の些細な変化にも気付けなければ上司失格だ。反省している…。これからは絶対に君を守る」

え…

なんだか… 胸が… キュンとして…

なんなの?これは?

「課長さんにそこまで言って頂けるなら安心です。どうか妹の事、頼みます…」

再び頭を下げる兄に課長も頭を下げ返す。

二人の気持ちが伝わってきて、私は胸を熱く焦がしていた…。

でも…

兄に対してとは明らかに違う、感情。

課長に抱き始めたこの感情は…