「ストーカー!?」

アパートに到着するや否や、課長はお茶も辞退して早速私の、正確には兄の話を聞いてくれた。

兄は詳細の説明を省き、いきなりストーカーに悩まされていると決め付けて話したのだ。

驚愕する課長を宥めようと私も大声になった。

「いえっ!課長、まだそうだと決まった訳ではないんです。お兄さん、決めつけるのはよくないわ!」

「何悠長な事言ってんだ。お前がそんなんだから相手が図に乗るんじゃないか。明らかにストーカー行為に該当する。お前は実際、恐怖を感じているだろ?ストーカーかどうかの判断基準は被害者が恐怖を感じているかいないかだ。その点では間違いなくヤツはストーカーだ」

「そうかもしれないけど、まだ…く、いえ、落合さんがそうだと決まった訳ではないでしょう?」

「お前が怪しいと思ってるなら間違いなくソイツは黒だ」

確かに"熊"だけに黒ね…。ツキノワグマ。

ああ…私ったら、このシチュエーションで冗談言うなんてもってのほか…

「あの…お取込み中申し訳ないが…もう少し、その…詳細を聞かせてくれないか?」

おずおずと課長が話に割って入る。

「あっ、申し訳ありません!」

私はこのところのイタ電の詳細を課長に話した。

課長は腕組みをしながらじっと私の話を聞いている。

その難しい表情からはどういう感情を読み取ればいいのだろう?

見ようによっては怒っているようにも思える。

仕事には厳しくても今まで一度たりとも怒りの表情を見せた事はなく、ミスをしても穏やかに諭すのがこの課長のやり方だ。

そんな課長が見た事もないような、まるで怒りを無理矢理抑え込んでいるような苦しそうな様子で…