私の話を黙って聞いていた兄がメモを差し出してきた。

"電話ではなく会って話した方がいい"

メモに書かれた内容を見て驚愕する。

会って…って、今から?

戸惑う私に兄は続けてメモに書きなぐる。

"課長がよければうちに来てもらえ"

うちに?

『もしもし、上杉くんどうした?』

あっ!今課長と話してる途中!

「申し訳ありません!あの…課長…お電話でするような内容ではないんです…。できればその…お会いして…お話したいのですが…」

『込み入った話なのか?』

「多分…」

少しの沈黙。

課長は今の私の話をどう受け止めたのだろう?

あまりにも現実味のない話だと思われたのではないかしら…。

でも課長は私の不安を払い除けるように力強く言った。

『わかった。今から行く。自宅は…Yヶ丘だったか?』

「いえ!あの…自宅にはいないんです…」

『…え?自宅じゃないのか?じゃあどこに…』

「実は今、兄の所におりまして…、詳しい事はお会いしてからお話致します。兄の自宅はYヶ丘から二駅先のR駅で…」

『着いたら君の携帯に連絡すればいいな?』

「はい…。申し訳ありません…」

『車より電車がいいのか?駐車場はあるか?』

「いえ…集合住宅ですので…電車が宜しいかと…」

『了解。一時間以内には行けると思う』

「宜しくお願い致します…」