「はい。検査の結果は良好でしたので、たった今戻った所です」

『そうか…、良かった…』

今度はさっきとうってかわって安堵の混じった声になる。

「ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。納品も無事に終わったようで…何から何まで本当にご迷惑をおかけしました…」

『そんな事は気にしなくていいんだ。仕事の事は本当に大丈夫だから。…あ、そういえば…担当の落合さんが上杉くんに面会に行きたいと言っていたが…退院したならそれも必要ないな』

なんですって? 

…熊が…面会?

「あの…く、いえ、落合さんが面会って…」

『いや、入院しているなら面会に行ってもいいかと聞かれたんだ。得意先の方にそこまでしてもらう義理はないとお断りしたんだが…。どうしてもと懇願された』

あり得ないわ…。

熊のヤツ、私が立場上何も出来ないと高を括って事もあろうに…
プライベートにまで顔を突っ込むだなんて…

「それで課長は許可なさったんですか?」

『君に聞いてみてからと言っておいた。さすがに業務ではないし、病院に来られても困るかと思ってな』

当然よ!

仕事では仕方なく我慢しているけれど、それ以外では顔も見たくないのだから。

課長にしては懸命な判断ね。

意外と気が利くところがあるじゃないの…。

丁度いいわ。

今を逃せばいつ相談出来るかわからないのだから、思い切って言ってみよう。

「課長…。実は…落合さんの事でご相談したい事があるんです…」

『ん?落合さんの事で…って?』

いきなり過ぎて当惑したかしら…。

でも課長の口からタイミング良く熊の名前が出たのだし、絶好のチャンスよね?