発信音が途切れ、聞こえてきたのは課長ではなく同僚の伊藤さんの声だった。

今課長は運転中で代わりに出たのだという。

納品の為に出かけた社用車を運転しているなら電話には出られないわよね…。

私は何故か少しだけ寂しさを感じてしまった。

そんな自分に戸惑いながらも伊藤さんに事情を説明する。

脳波とその他の検査の為今夜一晩は入院しなくてはならず、会社には戻れない事を話した。

事情が事情なだけに心配しなくていいと言ってくれた伊藤さんが、隣で運転しているだろう課長も同じ事を言っていると教えてくれた。

通話の中では課長の声は聞こえてこなかった…。

何か合図でもして伊藤さんに伝えたのかしら?

そんな事を考えていると伊藤さんが体の方は大丈夫なのかと尋ねてきた。

私は特に今感じている不調はない事を伝える。

仕事の事は自分と課長がいるから安心しろと言ってくれた伊藤さんに納品はどうだったのか尋ねると、売り場の担当者が手伝ってくれたおかげで意外と早く済んだと言われた。

詳細を確認するとやはり熊が張り切って手伝ってくれたらしい…。

フゥ…

聞かずとも熊がどんな風に手伝ったのかは容易に想像がつくわ…。