逸る心臓を宥めながらいつものように事務的に報告する。

「怪我はありません…。ただ、事故の相手の方が、念のため病院には行った方がいいと…」

『勿論、そうしてくれ。それで今は?』

「事故証明を出してもらうために相手の方が、警察と保険会社の担当者を呼んで、待っているところです」

『わかった。それと、納品は俺が代わりに行ってくる。君は警察の聴取が済んだら病院に行ってくれ』

「そこまでご迷惑を掛ける訳には…」

言いかけたところで課長に遮られる。

『迷惑なんて思う必要はない。部下のピンチの為に上司はいるんだからな。君はとにかく病院へ行ってくれ』

「はい…。わかりました…」

『くれぐれも無理はしないように。気分が悪くなったらすぐに誰かに言うんだぞ?』

「はい…」

『上杉くん、本当に大丈夫か?ご両親かどなたたかに連絡した方が良くないか?』

「いえ!それには及びません!私なら大丈夫です!」

『はぁ…それならいいんだが…』

「本当に…大丈夫です…。ご心配おかけして申し訳ありません…」

『いや、君が謝る事はない。とにかく病院には必ず行くんだぞ?』

「はい…」

電話を切った後も何故だか気持ちがフワフワしていて変な気分だった。

一体どうしちゃったの…?

初めて…

あんな課長の切羽詰まった声を聞いた気がする…。

だからなのかはわからないけれど…