とにかくお店に遅れる旨の連絡を入れなきゃいけないわね。

それと、課長にも。

まず今から訪問予定だった店に電話をし、事情を説明する。

電話に出たのが熊じゃなくて良かったわ…。

それから課長。

仕事用の携帯の番号もわかっているが、運転中や商談中なら出られないし、会社に掛ければ必ず誰かは居てくれる。

課長が不在なら伝えて貰えばいい。

私はそう思って会社に直接電話を掛けた。

出てくれたのは課長ではなく庶務担当者だった。

さわりだけ簡単に説明するとすぐ課長にかわると言われた。

戻っていたのね…。

『かわりました。安曇野です』

「課長、上杉です」

『事故だって?大丈夫なのか、怪我は?』

「特に異変はありません。それより…納品予定の商品が…使い物にならなくなってしまって…。申し訳ありません…」

『商品なんてどうでもいい。君の体の方が大事だ』

躊躇いなく言い切った課長の声に思わず心臓が跳ねた。

嫌だわ、私ったら…

きっといつもと違う雰囲気の課長の声に驚いたのね。