兄には相談してみると言ったけれど、私はまだ決めかねていた。

この期に及んで何が引っ掛かっているのか自分でもわからない。

何故かどうしても、課長と伊藤さんを百パーセント信用出来ないのだ。

そんな自分が嫌になる。

重苦しい気持ちを抱えたまま出勤する為に電車に乗った。

ああ… 

今日はまた熊の所に行かなきゃいけないわね…。

避けられない事とわかっていてもそう考えるだけで億劫だった。

社内にいる時は何事もないように振る舞っているけれど、営業で外へ出ると途端に不安がつきまとう。

一人きりの車の中では更にその不安が増して行く。

そんな時だった。

車に強い衝撃を受け、ハンドル操作が効かないままガードレールにぶち当たった。

何…?何が起こったの…?

ショックで思考能力が低下する中、必死に状況を把握しようとする。

運転席のウィンドウ越しに慌てた様子の中年男性が見えた。

あ… 私…事故に遭ったのね…。

車から降りるとそばにいた男性が携帯でどこかへ電話をかけている。

ハッとした私は荷台に積まれている商品を確認した。

箱が破損している…。

という事は中身も無事では済まされないって事、ね…。