兄の連絡先を教えてもらった当初は、すぐに連絡しなかった。

本当はすぐにでも、兄の状況を知りたいと思っていたのに…

私が兄と連絡を取っている事を父が知ったらと思うと恐ろしくて出来なかった…。

小さい頃から厳しくしつけられていた私にとって、父は絶対的存在だった。

心の中では反発しても表の顔は従順を装っていた。

まだ学生だったから仕方ないとはいえ随分と子供だったと思う。

両親に依存して生活していたのだから。

兄の事を内心案じながらも、自分の生活の基盤を失うのが怖かった。

アルバイトも禁止されている状態では親から独立するなんて夢のまた夢で。

結局実家から離れる事は出来ずじまいで今日(こんにち)に至っている。