いわゆる六畳一間というのか、兄の部屋は本当に狭かった。

その狭い空間にところ狭しと沢山の書籍が置かれている。

「今…どうしてるの?」

「ん…。相変わらず小説書いてるよ…。芽はまだ出ないけど…」

「そう…」

「でもな、この前新進小説家の登竜門の賞に応募したんだ。残念ながら落選したけど、小さい出版社が声をかけてくれたんだ」

「ほんと?」

「うん…。そこが出してるマイナーな雑誌なんだけど…。無名の作家に連続で短編を連載させてる企画があって。一部のマニアには好評らしいんだ。今度その雑誌に短編載せてもらえる事になった」

「すごいじゃない!」

「全然すごくないって!読者数が少ないし、出版数も少ない雑誌なんだから」

「それでも。同人誌とかじゃなくて出版社が出してる雑誌だもの。すごいわよ」

「ありがとな、綾」