兄の声を聞いて元気が出た私は言われた通り電車に乗ってR駅で降りた。

自宅と同じ沿線だけに、駅の周りの雰囲気も似通っているように見える。

商業ビルやコンビニもあるし利便性も高そうだった。

すると横断歩道の向こうに懐かしい姿が見えた。

兄も私に気付いたのか笑顔を見せている。

その笑顔を捉えた瞬間、抱えていた諸々の事が決壊した。

「お兄さん!」

私は思わず大きな声で兄を呼んだ。

信号が青に変わるのを待って横断歩道の途中まで行き兄に飛びつく。

「おい、綾。ここ、横断歩道のど真ん中。危ないだろ?それに…劇的な再会なのはわかるけど…恋人同士じゃないんだから」

そう皮肉りながらも優しく私の涙を指で拭い、急いで横断歩道を渡りきった。

小さい頃から大好きだった優しい兄。

変わらずいてくれてよかった…。