「営業…それは…本決まりなのでしょうか？」

私は錯綜する負の感情を極限まで抑え、平常心を保ちながら課長に尋ねた。

「…ほぼ、決まりだと思ってくれていい…」

「ほぼ、と仰いますと、九割方、と思って宜しいでしょうか？」

「そうだね…。十割にかなり近い九割だと思ってくれ」

間違いなく決定事項という事だ。

それは理解した。

組織に属する者として、異動の辞令は絶対受理しなければいけない事も熟知している。

でも…

せめてもの餞(はなむけ)として、私に白羽の矢が立った理由くらい聞いてもいいんじゃないだろうか？

「課長…。行けと言われるなら甘んじて受けるしかないでしょう…。ですが…何故私なのか…その理由をお聞かせ願えませんでしょうか？」

「理由？」

「はい。曲がりなりにも私は、ここでそれなりに経験を積み、実績をあげる事も出来たと自負しております。そしてこれからも…もっとここで研鑽を重ねる心づもりでおりました。それを考慮して頂けたかどうかは別としても、何故私が異動するのか、その理由を知る権利が私にはあると思います」

怯む事なく真っすぐに課長を見据え言い切った。