身支度を整えて自室のある二階から階下へ降りると、タイミング悪く父と出くわしてしまった。

「なんだ、綾子。出かけるのか?」

「ええ。ちょっとお買い物に」

「急ぎじゃなければ別の機会にしてくれ。大事な話がある」

大事な話って…

それはお父さんにとって大事なだけで、きっと私にはどうでもいい事だと思うけれど。


心の底ではそう思っていても、幼い頃から叩き込まれた習性はなかなか変えられず。

私は父の言う事に従い出かけるのをあきらめた。

父は台所の続き間の部屋に私を座らせた。