所詮小説はフィクションの世界。

どんな難事件だろうが、限界を迎えたと読者に思わせつつも終局では鮮やかに解決する。

でも現実ではそうはいかない。

名刑事も、それを助ける同僚も…いない。

それがどれだけ寂しい事か…。

今私は初めて自分が心を許せるような友人を作らなかった事を悔いた。

悔いた所でどうしようもないけれど。

上司も、まして同僚など頼れる筈もない。

伊藤さんだってまだ試行錯誤の日々を送っている。

管理部門から移ってきた者同士お互い仕事上では相談しているから、今の彼の状態はなんとなくわかる。

とても自分以外の事にかまけている暇はなさそうだという事も。

伊藤さん以外にはこんな事話せる同僚もいない私は、完全に孤立無援の状態になってしまっていた。