帰宅して両親と夕食を摂っていると、父が言った。

「綾子、異動後の仕事はどうだ？」

「大変だけど、少しは慣れたわ」

「全く…人事部ならまだしも女の身で営業部などと。一体ホテイは何を考えてるんだ」

私の父は有名私立大学で文学を教える教授だった。

昔気質な性格で、女は家にいるべきという考えの持ち主。

私にもその考えを押し付けて就職を決めた時はものすごく怒られた。

「女は仕事なんかせずに結婚して子供を産み家庭に入る」

なんという時代錯誤、なんという男尊女卑。

この時代にまだそんな古めかしい考え方の父はある意味、天然記念物かもしれない。
私は父の説教を聞くのが嫌で早々に食事を終えて部屋に戻った。

テーブルの上に置いてある携帯のランプが光っているのに気付き、見てみる。

着信があったみたい。誰からだろう？

開いてみると非通知になっている。

留守番電話にも何も入っていなかったから、間違い電話かなと決めつけてその後は忘れていた。

でも…

その翌日。

再び非通知の着信が、今度は二度に増えていた…。