「ホテイさん、うちの隣のスペースだそうです」

言われて棚を見るとメモ用紙にうちの会社の名前が書かれている。

「他社さんはまだみたいですね」

「先にやったモン勝ちですよ~!」

「そうですね」

ユウヒの担当者にそう言ったけど、早く終わらせたい理由が私の場合、ちょっと違うのよね。

熊から解放されたいだけだから。

一心不乱に陳列していた私は、同じく必死に陳列していたユウヒの担当者と勢いよくぶつかった。

その拍子に転んでしまう。

「あっ!すいません!」

慌てて謝り倒す彼に大丈夫、と言って立ち上がると、転んだ時に段ボールで擦ってしまったのか指から出血していた。

「あー、切れちゃいましたね…。申し訳ありません!」

「かすり傷ですから、ご心配なく」

化粧ポーチの中に絆創膏が入っているけれど一旦ロッカーに戻らなければならないし、早く作業を終わらせたい私はそのまま続けようとした。