軽井沢…。

具体的な場所が出たという事は、既に宿は予約しているのでしょう?
あなたの事ならお見通しよ?

「そう言われてみればそうね…。いつも高層ビルに囲まれているし、人も多いし…。自然もない訳ではないけれど、どこか造り物という感じもするわね…」

「そうだろう?そこは目の前に大自然が広がっていて、空気も綺麗だし、そういう所でゆっくり過ごすのが、日頃多忙な俺たちには必要じゃないか?」

直人が俄然張り切っている。
メリットを並べて顧客の興味をそそる方法。
あなたは知らず知らずのうちに営業のスキルを使っているわね。
でもそんなところも微笑ましくて。

「そうね…。行ってみたいわ…」

そう答えた時の直人の顔と言ったら…

小さい子供がずっと欲しがっていたおもちゃをようやく買ってもらえる時のように、少しだけはにかんだような無邪気な笑顔を見せてくれた。

ただこれだけの事でこんなに喜んでくれる…。
あなたの存在意義が全て私故と言ってくれるのが事実だと裏付けるように。

ありがとう…直人…。
当日までは何事も起こらない様に、私も細心の注意を払って仕事をします。

体も労わって…
あなたの計画に一ミリの狂いも起きないように。

だから…
素敵なプロポーズをしてね。

その日を心待ちにして、今夜も私はあなたと幸せな夜を過した。



 --- THE END ---