彼が指輪をつけるなんて発想は勿論ない。
どのみちサイズが合わない。

ならば自ずと導かれる答えは…
彼が私に指輪を贈ろうと考えているという事。
今さら指輪が何故?という疑問は持たなかった。
私たちは紆余曲折を経て、今ようやく安定した幸福の中にいる。
このままでも何ら問題はないけれど…生真面目な彼がきちんとケジメをつけようと思っている事は想像に容易い。

きっと…私が安曇野姓になる為の準備をしている…。
それが指輪紛失事件の真相。

これまで、あの手この手で私を喜ばせてくれた彼。
あの人がどんなシチュエーションを演出しようと考えているのか。
それを想像するのもまた一興。
どんなシチュエーションでも嬉しいには違いないけれど…

私がその事に気付いているのを彼はきっと知りたくはないでしょう。

だからその時が来るまでは…
気付かない振りをしていてあげるわね。