「俺が風邪を引いて倒れた時…お兄さんに助けてもらっておきながら何のお礼も言わぬまま今日まで来てしまったんだ…。あの時既にお兄さんは俺と綾子に何かあったと勘付いていたが…俺の体調が悪いから敢えて何も聞かずに帰ってくれた。元気になったら説明してくれと携帯の番号を教えてまでもらっていたのに…俺は綾子との幸せに浸って、恩を仇で返してしまっていたんだ…」

「そう…だったの…。知らなかったわ。兄とあなたがそんなお話をしていたなんて…」

「綾子…。君はお兄さんと絶縁状態だそうだね?お兄さんから宣言したと聞いたが…それでいいのか?」

「良くは…ないわ…。でも…煮え切らない私に兄が業を煮やして…絶縁を言い渡されたの…」

「らしいな…。だが俺が復縁した事をきちんと説明した。お兄さんはとても喜んでくれたよ。だから綾子も…連絡してみてはどうだ?きっと大丈夫だ」

「ええ、ええ…ありがとう…直人…」

綾子は涙を流しながら俺に礼を言った。

「仲のいい兄妹が仲違いしたままでいるのは良くない…。お兄さんも首を長くして君からの報告を待っている筈だ…。早いうちに行ってあげなさい…」

綾子は泣きながら何度も頷いた。