「綾子を…苦しめたくない一心でやった事が仇になってしまいました…」

「アイツ、処女だったでしょ?痛くないようにしてやったってのに、文句言われちゃどうしようもないよね」

「それは…その…」

「隠さなくてもいいですよ。どう考えたってアイツが色恋沙汰に現を抜かしてたとは考えにくいから。きっと安曇野さんが初めてのオトコだろうとは思ってましたよ、俺は。でもそれがアイツにはいいと思ってたんです。大人のオトコに導かれて女になるのがアイツにとっては幸せだって。でもそれが裏目に出ちゃったんだぁ…」

飄々と言っている兄はまるで他人事をしゃべっているように感じられた。

「それでですね…。綾子はどうしても蟠りが捨てられないと言って…私と別れるという決断を下したのです。ですが…やはりお互いの気持ちが消える事はなく…散々揉めて…元の鞘に収まりました…」

「やっぱり最後は…安曇野さんが折れてくれたんだ?」

「当然そうしなければならないと思いました。私が彼女を苦しめ悲しませたのですから。誠意を見せる為、ご実家にも通いご両親にも心配を掛けました…」

「あの親父を説得出来たんだからすごいよね?でも肝心の綾が臍を曲げちゃった」

「ご両親にも多大なるご協力を頂きました。お父さんは…私の気持ちを代弁して下さって…」

「信じられない…あの親父が…」

「厳しく諭して下さいました…」