「綾子にとっては…重要だったようです」

「たかが付き合った女の数がそれほど重要ですか?しかも過去なのに」

「過去が気になってどうしようもなかったのだと思います…」

「今が幸せならそれでいいと思うけどなぁ…。どのみち過去は過去なんだし。文字通り『過ぎ去った』って事なんだから」

「男からすればそうですが、女性はそうはいかないかもしれません。綾子は純粋無垢でしたから…」

綾子の気持ちを兄に誤解されてはいけないと考えていた。
だが俺が続きの言葉を模索している間に兄が呆れ顔で話し始める。

「フゥ…。…まあね、男は知らないだろうと思ってましたよ、アイツは。安曇野さんが初めてだったでしょうね、恐らく。けど…だからって過去を詮索するなんてやっちゃいけないでしょ?全く…どういう思考回路してんだろ…。理解に苦しむわ」

俺に対する兄の好意は有り難いが綾子を悪く思って欲しくはない。
とは言え、兄も女の気持ちは測りかねているのだろう。