だがやはり兄は聡明だった。

「心配しないで下さい。綾には言いませんから。どうせしょーもない理由なんでしょ?」

「綾子にとっては…つまらない理由ではなく、真剣に悩む材料になってしまったようです…」

「だから、何?その理由っての」

「それは…その…私の過去の女性関係で…悩んでしまって…」

「安曇野さんの過去の女?」

「はい…。本当は宿題を出されていたのですよ。私が過去に交際した女性の数が一般的なのかそうでないのか、それを聞いて来る事が…」

「ハァ…アイツ、バカじゃねぇの?」

「綾子さんが純粋だから、気になっても仕方ない事だと思いました。真っ正直に全てを話した所…疑心暗鬼になられて…」

「何人なんです?」

「は?」

「だから過去に付き合った女の数」

「…えっと…確か…八人、ほどでしょうか…」

「八人か…俺より一人多いな」

「そうなんですか?」

「でもね、安曇野さんの年齢を考えれば少ない方じゃないんですか?アイツはそんなくだらない事で安曇野さんを困らせてたのか…」

兄は大きくため息をついた。