俺は脱いだ靴を揃え、兄に促されて部屋に入った。
小さな卓袱台の上に買って来た弁当の袋を置く。

「夕飯がまだかと思いまして…デパ地下のですがご一緒に食べませんか?」

「えっ!いいんですか?ここの惣菜結構有名ですよね?食べてみたかったんだよなぁ」

相変わらず飾り気のない気さくな兄に心が凪いでいく。

「どうぞ、お好きな方を…」

「じゃあ俺、この松花堂弁当もらっていいですか?」

「勿論です」

「あっ、お茶いれますね!」

「どうぞお構いなく…」

「お茶っていってもペットボトルのなんで。気にしないで下さい」

兄はガラスのコップにお茶を注いで俺の前に置いた。

「いただきます!」

やはり兄は育ちがいいのか、きちんと正座して手を合わせている。

「旨い~!安曇野さんも、食べないんですか?」

「いえ、頂きます…」

しばし弁当を食べる事に集中し、会話も途絶えた。

食事を終え、兄はインスタントだがコーヒーを淹れてくれる。