隣で俺を見つめる綾子の体を引き寄せ、胸の中に閉じ込める。

「成田さん…報われるといいわね…」

「そうだな…。なんとなく…上手くいきそうな気がする…」

「そうね。桜井課長も絶対拒否している様子ではなかったものね…」

「愛の女神が後押ししてくれたんだ。きっと上手く行くさ…」

「愛の女神?」

「君の事に決まってるだろう?」

「直人…またそんな事言って…」

「尤もヴィーナスよりも綾子の方が美しいがな」

「直人ったら…」

「さあ、大仕事が無事終わった。女神からご褒美を頂かなくてはな」

「えっ?」

「惚けてもダメだぞ?タクシーの中でも言っただろう?夜は長いと」

「直人、元気良すぎ…」

「女神を目前にして、元気が出ない方がどうかしている」

「直人、大丈夫?桜井課長の言う通り、ほんとに色ボケしちゃったんじゃ…」

「仕事で神経を使い過ぎてるからプライベートではボケるのもいいだろう」

「そういう意味のボケ、じゃないんだけど…」

「ハハッ…わかってるさ、君の言いたい事くらい。軽くはぐらかしただけだ」

可愛く拗ねる綾子の髪を撫でながら、俺はいつか成田と桜井と俺たち四人で会うのも悪くないと思いを馳せていた。