中華料理店を出る時、支払いをしようとした俺を桜井がやんわりと制する。

「ここはあたしに持たせて。結婚の前祝と…彼女に対するお詫びのしるしとして…」

「桜井課長…そんな…」

綾子は気まずそうにしていたが俺がそれを遮って答えた。

「じゃあ…ありがたくご馳走になろう。綾子、遠慮する事はない。それだけじゃ足りないくらい君は傷つけられたんだからな」

「ほんとに…甘々ね…」

「悪いか」

「いいえ、別に。悪くありませんわよ」

桜井と俺たちは笑顔で別れた。

これから桜井が成田とどう接してくれるのか…
俺たちはただ見守る事しか出来ないだろう。

だがきっと…
成田の笑顔が作り笑顔ではない本物の笑顔になれる日が来ると、俺は信じている…。