結局は口論めいた事になってしまう俺たちに、綾子が静かに割って入る。

「繊細だと思います…。桜井課長は…」

「え…?」

桜井は明らかに動揺していた。
綾子が自分を侮る事なく、寧ろ庇うようなセリフを吐いたのだから…。

そこで料理が運ばれて来て話が中断した。
食事を堪能するどころではない雰囲気だったが、空腹だとイライラすると思った俺は桜井に言った。

「まずは空腹を満たそうじゃないか。腹が減っては戦は出来ぬからな」

「そうね…」

綾子に料理を取り分け、回転テーブルを桜井の方に回す。

「至れり尽くせりね…」

「ん?何がだ?」

「彼女…。すごく素敵なシンデレラ…」

「ああ…。だがシンデレラではない。魔法は解けないからな」

「プッ…何それ?」

「俺が綾子にかけた魔法は解けない。それは真実の愛という魔法だからだ」

「ちょっと…どうしちゃったの?安曇野くんってこんなキャラだった?」

「綾子を好きになって変わったんだ」

「そう…」

桜井は途端に沈んだ顔になる。