予約はしていなかったが、高級過ぎるこのホテルの飲食店は満席になる事は殆どない。
三人で個室をとお願いしてもすぐに通された。
適当にコース料理を注文し、俺は本題に入る。

「桜井。さっき綾子が言った通り俺たちは成田の事で話があるんだ」

「全く意味不明ね…。成田くんがあたしに何の関係があるのかしら?」

「元同期…。それだけじゃないな…。今はお前の…飲み友達だろ?」

「会ったの?」

「ああ。昨夜綾子と三人でな」

桜井はいかにも面倒くさそうな顔つきでため息を吐く。

「…何を聞いたか知らないけど、成田くんとは元同期のよしみでたまに飲みに行ってるだけなの。それがなに?迷惑でもかけたの?」

内心の怒りを隠そうともせず突っかかって来る。

「桜井。そんなに尖がるなよ…。俺たちはお前と口論しに来たんじゃないんだ」

「…随分調子がいい事言うのね…。あたしが行った時はいつもケンカ腰だった癖に…」

「それはお前が綾子を嫌な目に遭わせるからだろう」

「そんな事した覚えはないわ。もし彼女がそう受け取ったなら、あの程度の事聞き流せない器の小さい人って事ね」

「お前とは違うんだ。綾子は繊細なんだ」

「繊細じゃなくて悪かったわね」