「俺の婚約者だ。今夜はお前と親睦を深めようと思ってな」

「…どういう意味…?」

「言葉通りだ。他意はない」

「だったらあたしは遠慮させて頂くわ。二人でごゆっくり食事でもすればいいでしょう」

「そういう訳には行かないんだ。お前に大切な話もあるんでな…」

「大切な…話?…そこの彼女との事なら聞かずともわかるわ。二人してあたしを愚弄しようとでも?」

そこで初めて綾子が言葉を発した。

「いえ!成田さんの事で…大切なお話があるんです…」

「成田…くんの事?」

「桜井。ここで突っ立って話すのもなんだろ。レストランへでも行かないか?おススメは?」

「え…?そうね…フレンチもイタリアンもあるにはあるわ…。でも…どうかしら、中華は?」

「そうだな…。綾子、中華でいいか?」

「ええ…」

桜井は無表情のまま

「ではそうしましょう」

と言い、自分が先頭に立って歩き始めた。

俺たちはエレベーターで中華料理店のあるフロアへ上った。