「…直人くん…いえ、直人の思う通りに進めて。私もサポートするから…」

え?
今…綾子が俺の名を呼び捨てにしたのか…?

聞き間違いだろうか?

「綾子…その…」

「どうしたの?」

「いや…今、呼び方が違ったような…」

「あぁ…。なんだかそう…呼びたくなったの…」

嬉し過ぎてどうにかなりそうな俺だったが、ふと綾子の表情が優れない事に気付く。

もしかすると…
綾子にとって今夜桜井と会う事は本当は耐え難いのではないか…?

以前、二度とアイツと関わって欲しくないと言われた事を思い出す。
今回は他ならぬ成田の頼みだし、自分から言い出した事への責任感から致し方ないと思っているのだろう。

再び綾子を不安の淵に追いやる訳にはいかない。

「綾子。これからは直人と呼んでくれ」

「いいの?」

「いいも悪いもない。君が呼びたいように呼んでくれるのが俺にとっては至福の喜びだ」

「フフ…ありがとう…」

綾子はそう言って俺に抱き着いた。