「綾子…。約束の時間まで…どうする?」

「そうね…。予定では水族館に行こうって言ってたわね」

そうだ…。水族館…。

だが水族館ならわざわざ大阪で行かなくとも東京(あっち)でも行けない事はない。

他に行きたいところがないなら…
俺としてはこのままここでまったりと過ごしたい…。

「綾子は水族館にどうしても行きたいか?」

「えっ?…どうしても…って事は…ないけど…」

「だったら今日はここで…このホテルの中で過ごさないか?一階にはブランド店や、雑貨店などもあったし、プールやエステもある。食事はルームサービスでもいいし、レストランも充実している…」

「ねぇ…直人くん?」

「なんだ?」

「もしかして…緊張してるの?」

「緊張?何にだ?」

「だから…桜井さんにどうやって話そうかって…。言い負かされるんじゃないかって…」

「ハハ…。俺がプレゼンでアイツより劣ると思うか?」

「そうじゃないわ…。成田さんの気持ちを確実に桜井さんに伝えるって…かなりの重責だと思うから…」

綾子に言われると然もありなん、だと思い始めた。
だが、契約を取る為のプレゼンではない。
これは俺が成田の親友として行うのだ。

そこに駆け引きは不要だ。
成田への俺の思いが伝わるか伝わらないかは…桜井次第だろう。