俺と綾子は翌日の予定を変更して、ホテイビール大阪支社に電話をかけた。

受付の職員に氏名と本社の所属部署を伝えるといとも簡単に桜井と繋がった。

『ちょっと、安曇野くん？どうしたの？電話なんて…』

「今、大阪に来てる。今夜会えないか？」

『ち、ちょっと…どういう風の吹き回し？あなたの方からお誘いがあるなんて』

「いいのか悪いのか、どっちだ」

『いいに決まってるでしょう？嬉しい…。どこで何時に待ち合わせする？』

「お前の終業時間に合わせる」

『じゃあ…六時はどう？場所は…Ｎ島のＧホテル』

「わかった」

電話を切り、隣で聞いていた綾子に詳細を告げた。

「私が一緒だとわかったら、怒るでしょうね」

「怒ったところであの格式高いホテルでは騒ぐに騒げないだろう。自分から決めた事で墓穴を掘ったな」

笑いながらそう言った俺に綾子もつられて笑う。

「意地悪ね…」

「アイツが君にした仕打ちに比べれば随分優しい方だと思うがな」