「お前には悪いがわからない。俺にはそんな経験はないからな」

「直人くん…。もう少し…言い方が…」

「こういう話はオブラートに包まないほうがいい。事実をはっきりと突き付けてやるのが優しさだと思う」

「綾子さん…いいんですよ。コイツがこういうヤツだって事は…俺も嫌というほどわかってるから…」

「成田。お前に恩返しする。桜井の事は俺に任せろ」

「安曇野…お前…何バカな事言ってんだよ?お前を好きなアイツがお前と接触したら…踏ん切りがつくどころか…再燃させちまうだろ?」

そこで綾子が言った。

「大丈夫です…。私が一緒に行きます…。桜井さんに…誠意を持って話してみます…」

「上手くいく保証はない。だが出来る事を精一杯やる。結果がついて来なければ…申し訳ないが…」

成田は泣き笑いをしながら弱々しい声で言った。

「あり…がとな…、二人とも…。結果はどう…なっても…俺の…本心を…伝えてくれるか…?」

俺と綾子は力いっぱい頷いて見せた。