成田の話は続く。

「嫌な思いを打ち消す為に一人で飲んでたバーで、偶々俺が行きつけの店だったんだが…泥酔したアイツと…再会した…。でも会ったのが俺で良かったよ。あの状態じゃ誰かにお持ち帰りされてもおかしくなかったから…」

「それでお前と成り行きで関係を結んだのか?」

「俺にとっては…成り行きのままで終わらせるつもりなんてなかった。そのまま付き合おうと思ったよ。けど…アイツの中にはまだ…お前への気持ちが燻ってて…俺じゃ…俺じゃダメだった…」

気が付くと隣の綾子は涙を流していた。
時折漏れる嗚咽で気付いた。

「俺は…その日からずっとアイツを見守ってきた…。お前を忘れられるように、俺に出来る事は何でもやった。朝までずっと一緒にいてくれと言われたのもアイツがお前を忘れる為だった…。けど…希望通りにしても…アイツがお前を心の中から排斥する事はなかった…。俺が…どんな気持ちでいたか…安曇野…お前にわかるか?」