「何度かそれらしい事を言って口説いてみたけどな。元々俺ってこういう見た目だろ?信じてもらえなかったのもあるんだ…。けど何よりも。彼女が追いかけてる男が俺よりも数倍いい男だったってのが一番の敗因だけどな…」

「敗因って…。桜井は単に真面目に受け取ってなかったってだけじゃないのか?」

「真面目に言ったところでどうしようもねぇだろ?アイツが好きなのは俺じゃないってわかってんだから。ま、ずっと傍で見てるのが辛かっただけに転職したのは正解だったわ」

「お前まさか…それが転職の理由だったのか?」

「それだけで転職するほどおめでたくねーよ!ちょうどホテイの仕事も飽きて来てたトコだったしな。タイミングが合ったってだけだよ」

成田はそう言ったが…
どう考えてもコイツの転職は急な事だった。

その背景に桜井の事があったなんて、全く気が付かなかった…。

「成田…。お前が大阪に居続けるのは…桜井がいるからか?」

「アイツが大阪(こっち)に来たのは偶々(たまたま)だよ」

「こっちで会った事ないのか?」

「ん?…ああ…何度かは一緒に飲みに行ったけどな…」

「行ったけど?」

「お前の話ばっか聞いててもつまんねーだろ?そのうちアイツも連絡してこなくなったから…」

俺はふと、疑問に思った事を尋ねてみたくなった。