「お前もよく知ってる女さ…。ソイツは俺なんか見向きもしないで…ずっと同期の男を追っかけてたけどな…」

同期の…男…?

「成田…それって…お前がホテイ時代の話か?」

「そう…」

ホテイ時代に同期っていえば…
何人もいた事は違いないが… 
その同期の中で成田との接点があった女は…数少ない。

その中で成田が割と親しくしていたのは…
桜井、しかいないじゃないか…。

「お前まさか…桜井を…?」

俺の言葉に隣の綾子も驚愕したのか、座っている椅子がガタッと動いた。

「片思いもここまで来ると悲劇を通り越して喜劇だろ?」

自虐的に言う成田を複雑な思いで見つめた。

桜井が追いかけていた男というのはまさに俺の事だろう。

それを…
俺に対する桜井の想いを知りながら、コイツは桜井を想い続けていたというのか…。