結局、綾子のセレクトに任せる事にした。
綾子はいつも俺の体調を気遣い、たとえ外食であってもカロリーや栄養が偏らないよう配慮してくれる。
今回選んでくれたのも野菜がたっぷりでカロリーも控え目のものばかりだった。

ベトナム風生春巻き、タイ風の牛肉サラダのヤム・ヌア、モッツァレラチーズとスモークサーモンを油揚げで挟んだミルフィーユ、鶏ささみと木綿豆腐の棒棒鶏(バンバンジー)

成田が綾子のセレクトメニューを見るなり「愛を感じるなぁ!」と賛嘆の声をあげたほど。

食事の途中ではあったが成田が酔わないうちにと思い、俺は改まって彼に向き合った。

「成田…。ほんとに世話になった。お前のお陰でなんとか元の鞘に収まる事が出来た。心から礼を言う。ありがとう」

「ち、ちょっと…なんだよ!改まって!」

「きちんと礼は言わせてくれ。いくらお前と俺の仲でも今回の事はさすがに…人生を左右する問題だったからな…」

隣で綾子も俺に倣って礼を言った。