予約しているホテルのチェックイン時刻にはまだ早い。
かといって大きな荷物を携えたまま、この人でごった返す大阪の街を闊歩するのは難しい。
俺は綾子に荷物をコインロッカーに預ける事を提案した。

身軽になった綾子は、心までも解き放ったかのように溌剌とし大阪を満喫している。
まるで子供のようにはしゃぐ姿を見て連れて来て良かったと実感した。

「綾子、少し早いが昼メシにするか?何が食べたい?」

俺は綾子が食べたいんだが…
とは勿論言わなかった。

綾子は屈託のない笑顔でやはり大阪名物がいいと言った。

「夜は成田に任せてるが、どんな所へ行くのかわからんな…」

「だったらお好み焼きは?」

お好み焼きか…
綾子がハフハフとお好み焼きを食べる姿を見るのは、悪くない。

「そうだな。そうしよう」

俺は適当に店を選んだ。

成田から外見のオシャレな店よりちょっと汚いくらいが大阪では旨い店だと聞いていたから、そういう所に決めた。