そうして待ちに待った連休がやって来た。

天下の台所、大阪。
この地に降り立ったのは何年振りだろう…。
相変わらず活気に満ち溢れた町だ。
仕事関係でしか訪れた事はないが、いつ来ても人々の元気の良さには驚かされる。
人の数は東京より少ない筈なのに皆の歩く速度が速いからなのか、勢いがあるように思える。

「なんだか皆急いでいるみたいね」

綾子も俺と同じように感じている。
嬉しくなった俺はつないだ手を更に強く握った。

「人がたくさんいて迷子になったらいけないからな」

俺がそう言うと嬉しそうにはにかむ。
可愛すぎてもう我慢が出来なくなってきた…。

宿泊する予定のホテルは高級過ぎて連休であるにもかかわらず空室があった。
いきなりホテルへしけこんで綾子を堪能…という訳にもいくまい…。
綾子にとっては初めて訪れるこの地で見るもの出会うもの、期待に胸を膨らませているに違いない。

成田との約束は夜だから昼は観光がてら市内をブラブラしたり、食いだおれの所以である食を堪能するのもいい。
初めての二人っきりの旅行に俺も顔が綻ぶのを止められなかった。