結果的には認めてもらえた訳だが、本音としてはお父さんが出した条件を今すぐには呑めなかった。
すぐに子供を、という希望は綾子の意思も尊重しなければならないからだ。

俺がその事を説明すると伊藤くんはそれでよく許してもらえたと訝しんでいる。
許してもらう為にお父さんの希望を呑むというような方便を使ったのだ。

俺ではなく…綾子が、だったが。

嘘をついたのかと追求してくる伊藤くんに綾子が反論する。

「人聞きの悪い言い方しないでよ、伊藤さん。別に直人くんが悪い訳じゃないの。私がそう言ったのよ」

綾子が何の気なしに俺の下の名前を言った。
その事に若干引き気味の伊藤くん…。
さすがに俺が下の名前で呼ばれている事を伊藤くんに知られるのは照れるな…。