「あの…実は…俺、そろそろ結婚を具体的に考えてて…」

「そうなの!?」

驚いて大声を出す綾子。

「そんなに…ビックリしなくてもいいじゃないですか…。上杉さんは知ってたんですから…」

「それは、伊藤さんに彼女がいるという事だけでしょう?まさかもうそんなお話になってたなんて!」

「俺としてはまだ…そこまで考えてなかったんですよ。けど…外野がですね…せっつくというか…」

「なあに?結婚する気はなかったの?」

「いえ…そうじゃなくて…。俺は俺なりにプランを練ってですね…その…プロポーズしたいなって思ってたんですよ。それが…家族の方からどうなってるんだって聞かれて、まだ二人で何も話し合ってないってのに…どんどん話が進んじゃって…」

「それで…流れに任せちゃったの?」

「勿論、結婚するなら彼女って決めてはいましたよ?でもなぁ…なんで彼女にプロポーズする前に家族親戚の前で公開プロポーズしなきゃなんないんですか…」

「公開プロポーズだったんだ?」

「無理やりですよ?彼女の方も寝耳に水だったし、いきなり聞かれて…困ったと思います」

「でも結婚する気だったならいいんじゃない?手間が省けて」

「上杉さん…こういうのって手間を省いちゃいけなくないですか?」

「まぁ…そうとも言うわね…」

「一世一代の人生の転機を、親や親戚連中にせかされてっていうのは…なんだかなぁ…」

「でも今更どういっても仕方ないじゃない?その方向で進めるんでしょう?」

「そうなんですよ…。で、相談っていうのはその事で…。うちの親には了解をもらってるんですけど…実は俺、まだ彼女の両親には会ってなくて…」