得意先に訪問しての帰り。
俺は車の中から成田に電話した。

『おい、安曇野!お前あれから梨の礫じゃねーか!逐一報告しろよ!』

「悪かった。色々立て込んでしまってな」

『で?どうなった?』

「お前のお陰で復縁出来た」

『マジか!良かったなぁ』

「世話になったな。それで、お前に言われていただろ。彼女を紹介しろと。今度の連休、そっちに行こうと思ってな」

『そうなのか!いやぁ、嬉しいわ』

「都合は悪くないのか?」

『全部キャンセルしてでもお前らに会うの優先するに決まってんだろ?』

「じゃあ、また近づいたら待ち合わせ場所と時間決めるか」

『そうだな』

成田との通話を終え会社に戻る。
三連休を無事に休めるよう懸案事項はなるべく少なくしておかなければ。

今日は残業だな…。
綾子に伝えておこう。
帰社すると、まだ残っていたらしい綾子の後ろ姿が目に入った。

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

ひどく事務的に無表情に答える綾子に笑いが込み上げる。
俺はデスクにたまった書類に目を通し、綾子に関係あるものを選別した。

その書類の上に、『今夜は残業で遅くなる』と書いた付箋紙を貼り、綾子の所へ持って行く。

「上杉くん。この書類に目を通しておいてくれ」

「はい」

綾子は一番上の書類に貼られた付箋紙に気付くと、デスクに戻った俺の方を見て微かに頷いた。