実家は千葉で、某テーマパークの近くだ。
一度連絡してみると綾子に言った。

「君は美人だから、親父はテンション上がるな」

「恥ずかしい事は言わないでよ…」

「大丈夫。形式的に終わらせよう」

「それはダメ。うちの両親にもしてくれたみたいに、今度は私がきちんと挨拶するわ」

「うちは反対する理由がないからな」



そして俺の予想通り兄一家と両親は綾子を大歓迎し、対面を終えた。

早く結婚しろと急かされて、恥じらう綾子のなんと可愛かった事か…。
その場で抱き締めたい衝動を抑えるのに苦労した。

「とにかく、無事に済んで何よりだったな」

「ええ。皆さん温かい人たちばかりね。あなたが大切に育てられたのだとよくわかったわ」

俺は幸せの最中(さなか)でふと、重要な事を忘れていたと気付いた。

それは…
苦しみの中にいた俺を救ってくれた知己、成田の事だ。
元の鞘に収まった暁には綾子に会わせろと言っていたな。
アイツには頭が上がらない。

一度旅行を兼ねて大阪まで会いに行くか…。