再び綾子との穏やかな生活に戻る事が出来た俺は、今度の事で綾子の存在がどれほど大切か嫌という程思い知った。

早く籍だけでも入れたかったが、俺も綾子も仕事に追われ、なかなか時間が取れない。
きちんと式も挙げたいし、お披露目もしたい。

それから…俺の家族にも
会って貰いたい。
なんとなく言いそびれて今日まで来てしまったが、やはり両親には早く安心して貰いたい。
なかなか結婚しない俺に散々見合いの話を持って来たりしていたのはもう数年前だ。
近頃は諦めたのか話も出なくなった。

夕食の席で俺は綾子に打診してみた。

「綾子、今さらだが、俺の家族に君を紹介したい」

「あっ!そう、よね…。私、自分の事ばかりで…そんな大切な事を投げたままにしていたわ…」

「色々あったからな…。仕方ないさ。うちはまず問題ない。君は大船に乗ったつもりでいてくれればいい」

「それでも、やっぱり緊張するわね…」

俺の家族は両親と兄だ。
親父は長年勤めていた会社を定年退職し、今は悠々自適の生活を送っている。
母親は専業主婦。
兄は俺とは二つ違いでごく平凡なサラリーマン。結婚していて二人の男の子がいる。

俺の家は絵に描いたようなごくありふれた中流家庭だった。