座卓の上にはいつもより少しだけ豪華な夕食が整然と並べられている。

「安曇野さん、どうぞお座りになって」

母が部屋の入口に佇んだままの直人くんに言った。
うちは古い家で、いわゆる今どきのダイニングルームがない。
和風建築ゆえに基本的には畳の部屋ばかりだ。
台所から続き間になっている和室に大きな座卓が置いてあり、主にここで食事をする。
その座卓の上座の位置に直人くんの席が用意されていた。

いつもの席には父が微笑みながら座っている。
こんなに穏やかな父の顔を見たのはいつぶりだろう?
子供の頃はよくこういう表情をしていたかもしれないけれど…

「安曇野さん。大したものじゃないが、召し上がって下さい」

父が言うと直人くんは父の前でいきなり土下座をした。

「お父さん…お母さんも…この度はご心配をお掛けし大変申し訳ございませんでした…」

突然の行動に両親は驚きの表情で直人くんを止めた。