「綾子?夕食の支度が出来たの。安曇野さんと…一緒に下りて来ない?」

「あっ!はいっ!今行くわ!」

直人くんと顔を見合わせて笑う。

「とりあえず…ご両親にはきちんと報告しないとな」

「…ええ…」

「もう…他に(わだかま)ってる事はないか?」

「…大丈夫よ…。本当に…ごめんなさい…」

私は安堵と、直人くんへの愛を再認識した事で再び涙を流す。

「綾子…泣くな…」

「…ごめんなさい…。嬉しいのと…酷い事をしてしまった自分が悲しいのと…訳がわからないのだけれど…涙が止まらない…」

「泣きたいだけ…泣くか?」

「…いいえ…もう…涙はいらないわ…。嬉しい時以外は…」

「そうだな…。これからは二人で色んな感情を共感しながら生きて行こう。俺はいつだって綾子に寄り添ってやるから…」

直人くんの言葉に幸福感が沸き上がって来る。

「ええ…。私も…私もあなたの傍に一生…寄り添っていたい…」

そっと直人くんの肩に頭をもたせかけると、その優しい大きな温かい掌で何度も髪を撫でてくれた。