伊藤さんはその性格からか私に同情的だったからいいようなものの、他の人ならこうはいかなかったかもしれない。

あのお店の課長のように私をバカにしたかもしれないじゃないの。

そんな事もわからずに面白いエピソードよろしく話すなんて。

なんか… ダメ。

どうしてもこの課長、尊敬に値する人とは思えないわ。

伊藤さんの顧客をまわり終えた私たちはやっとのことで帰社し、遅い昼食を社食で摂る事になった。

社食のおばさんは伊藤さんと親しいらしく、仲良さげに話をしている。

席についた伊藤さんに課長がその事を指摘すると、親しくなった経緯を説明してくれた。

おばさんの初歩的ミスでオーダーを間違えられてしまったが、それを気にせず食べた事でおばさんに感謝されたらしい。

たったそれだけの事と思うけれど、今までうちの営業職員が社食のおばさん達にも上から目線で話しているのは私も知っていた。

だから伊藤さんの誠実な対応はおばさんを喜ばせたんだろう。