「綾子…今日も来てしまった…」

「……」

「今日は仕事も問題なく終わったよ…。君の訪問予定先は、俺と伊藤くんとで代わりにまわったから…」

「……」

「辛いようなら体調不良でしばらく休職してもいい…。君が望むなら…別の部署に異動しても…いい…」

異動…。
そんな事、微塵も考えた事はなかったわ…。

そうね…。
異動すればもう、あなたと顔を合わせる事もなくなるわね…。

「君が希望する部署があるなら…俺が掛け合おうと思っている…。少しでも君が元気になれるよう…俺に出来る事があれば何でも言って欲しい…」

あなたはいつもそう。
いつも私の気持ちを最優先に考えて。
そしてその好意にいつも甘えていた私。
あなたにそうされる事が、当たり前のように思っていた私。

女王様にでもなったつもり?
したり顔でほくそ笑んでいるのでしょう?
嫌な女!

「私なんかの為に…あなたの力を使わないで下さい…」

「綾子…?」

「こんな最低な女の為に、あなたの貴重な人生を費やさないで下さい」

「綾子…」

「あなたの人生に泥を塗るだけの女です…。どうか…見捨てて下さい…」

そうよ…
こんな女といたってあなたにはなんの救いもない。
それならば全て失くして始まりに戻してしまえばいい…。