途中心配した両親が何度となく部屋に私の様子を伺いに来た。

母が作ってくれたおにぎりは…
私の涙を誘うほど、懐かしい味がした…。
母の優しさ、温かさが、胃だけではなく心にも沁みて…
どれほど泣いたかわからない。
どれほど泣いてもまだ枯れない。

一体どうやってこれほどの涙が作られるのか…
一体いつになればこの涙は止むのか…
答えなど出る筈もない事を私はいつまでも考え続けていた。



夜になり、再びドアがノックされる。
母が夕食を持って来てくれたんだわ。
そう思った私は躊躇う事なく「どうぞ」と返事をしていた。

でも、開かれたドアの向こうに立っていたのは母ではなく…
あの人だった…。

彼は珍しく昨日と同じスーツを着ていた。
几帳面な彼は、同じスーツを続けて着たりする事はなかった。
それは営業という仕事柄でも意識していた事だった。

それなのに…
今日は昨日と同じスーツ、ネクタイ姿で。
顔には疲労の色が濃く表れている…。
彼をここまで追い込んだのは…間違いなく私…。
そう思うと彼の顔をまともに見る事が出来なかった。