嫌…
彼女にも言ったセリフを私に投げかけないで!

「だったら…もう私の前に現れないで!そっと…しておいて!」

激情に任せた私の言葉に反応したのは…
父だった…。

「いい加減にしないか、綾子」

「お父さん…」

今まで私の事など無関心を装っていた父。
あの人との交際を認めてくれてからは、その態度が徐々に軟化はしていたけれど…
私に面と向かって意見してくることなどなかった。
その父が…今は鬼の形相で私を睨み付けている。

私と話をさせて欲しいとあの人に言った父はいつもの父とはまるで別人のようだった。
父が紡ぐ言葉の数々で…私がどれほど心配を掛けていたのかがわかる…。

そしてあの人を…
心から信頼してくれている事も…
彼ほど私を思ってくれる男はいないと…素直になれ、と…。

それが出来ればこんなに苦しい思いに身を投じてなどいないわ…。
それが出来ないから…こんなに苦しんでいるのよ…。

私は再び涙を流す。
そして父は彼に、私を見捨てないでやってくれと言った。

私の代わりに…
頭を下げて…

お父さん…ごめんなさい…。
こんな年になってまで心配ばかりかけている親不孝な娘を許して下さい…。